April 26, 2008
インディペンデントダブルタンク
カテゴリー:Diving Equipment /カテゴリー:Scuba Diving; Log前のエントリー(4/20 宇佐美)で使ったダブルタンク装備の話。
今回使用した構成は、インディペンデントダブルタンクといって、平たく言えば、通常の「タンク+レギュレーター」を2組まとめて背負えるようにしたものです。
そのための器材は、以前、別のプロジェクトのために用意し、実際にダイビングプールでの運用テストまでは行ったのですが、結局そのプロジェクトが中止になってお蔵入りになっていたものです。
さて、テクニカルダイビング(この呼び方もすごく気に入らないのですが、その話はいずれまた…)で使用されるタプルタンクは、2つのタンクバルブが締切弁付きの管(マニホールド)で結ばれていて、通常は、2つのレギュレーターのどちらを吸っても両方のタンクから均等に空気を消費し、万一の場合には、2つのタンクバルブと締切弁を適切に操作することにより、最悪でもその時点での空気残量の半分は確保できるという考え方になっています。
インディペンデントダブルタンクにはこのマニホールドがありませんので、テクニカルダイビング的には、本来、数分(深度によっては数呼吸)おきに使用するレギュレーターを交換して、両方のタンクの空気をできるだけ均等に消費するというテクニックが要求されます。
しかし、今回はあくまでも無減圧潜水の範囲内で潜るので、片方のタンクの残圧が50気圧程度になったらレギュレーターを交換するという手法で潜りました。
2本のタンクをバランスよくBCに固定するために、合計4本のタンクバンドを使用します。
使用したBCは、とくにテクニカルダイビング用ではない、普段使用しているものです。
タンクセットを固定するためのボルト穴(2ヶ所)があれば物理的には取り付きますが、BC本体やバックプレート、ハーネスなどの強度や、必要な浮力が確保できるかなど、実際に使えるかどうかは確認が必要です。
私のBC(個人輸入品)のマニュアルには、10ℓ×2本の構成(おそらくスチールタンク)での使用が可能との記述がありましたが、現行のマニュアルは最大タンク容量20ℓとの記述があるのみで、そこまでは明記されていません。また、日本の代理店はあくまでも「シングルタンク用」としています。
首に掛けているのがセカンダリ(予備)のレギュレーター、脇の下から首を回っているのがプライマリ(通常)のレギュレーターで、空気をシェア(いわゆるオクトパスブリージング)する場合、プライマリの方を相手に渡すのが、テクニカルダイビングでの基本形です。ファーストステージが2つになったこと以外、基本的には普段と同じ装備です。
タンク2本の重さが中身の空気を含めて15kg×2=30kgで、装備の全重量は40kg弱というところです。これでも、テクニカルダイビング系の装備としては軽い方ですかね。もっとも、水中では、タンクそのものの重量はほぼゼロなので、通常の10ℓスチールのシングルタンク装備と運動性はそれほど変わりません。
最後に、一応お約束の「お断り」を。
ダブルタンクを使用してのダイビングには、通常のダイビングより高いリスクが伴います。適切な指導者のもと、浮力コントロール、エアマネージメント、減圧理論等、相応の知識と技術を習得したうえで、完全に調整された適切な器材を使用して実施することを、強く推奨します。
また、当Weblogの記事を参考にしたことの有無にかかわらず、筆者であり当Weblogの管理者であるところの私・Sealionを含めたすべての関係者は、あなたが被る可能性があるどのような損害についてもその責を負いません。
Dive safely at your own risk!
投稿日時 : Apr 26, 2008 23:33 | 個別エントリーへのリンク | コメント (9) | トラックバック (0)
April 22, 2008
怪しい伝説
カテゴリー:Diving Equipment /カテゴリー:Scuba Diving; Other /カテゴリー:Skin Diving & Snorkeling沖縄の海は伊豆に比べて塩分が濃いので、ウェイトが多めに必要である。
本島・離島を問わず、このようなことをよく耳にしますが、本当にそうでしょうか?
検証してみましょう。
データとして必要となる地域ごとの海水塩分濃度については、日本海洋データセンターのサイトの塩分統計から、経緯度1度で区切られたメッシュごとのデータを得ることができます。
これによれば、沖縄近海の塩分濃度は34.5‰(3.45%)から34.8‰、河川の影響を受ける相模湾や駿河湾の沿岸部を含む伊豆近海で33‰程度、伊豆諸島近海で34.2‰〜34.5‰と、それほど大きな違いは見られませんね。
なんか、計算する前から結果が見えてきましたが、めげずに先を続けます。
海水が物体に及ぼす浮力を計算するためには、海水の密度(比重)を計算しなければなりません。これには、UNESCOから公表されている「海水の状態方程式」と呼ばれる計算式を使用します。かなり複雑な式なので内容は省略しますが、塩分濃度と温度、圧力(水深)から海水の密度が計算できます。
ダイビングに関係する水深の範囲では圧力の影響は無視できるので、塩分濃度30〜40‰、水温15〜30℃の範囲で海水の密度を計算した結果は以下の通りです(単位はkg/m3)。
| 30‰ | 33‰ | 35‰ | 40‰ | |
| 15℃ | 1022.122 | 1024.431 | 1025.973 | 1029.834 |
| 20℃ | 1020.954 | 1023.238 | 1024.763 | 1028.583 |
| 25℃ | 1019.569 | 1021.832 | 1023.343 | 1027.127 |
| 30℃ | 1017.985 | 1020.230 | 1021.729 | 1025.483 |
この数値を見ているだけではよくわかりませんから、モデル計算をしてみます。
以下の表は、総重量100kg(体重75kg+装備重量20kg+ウェイト5kgを想定)のダイバーが、塩分濃度33‰・水温20℃の海(伊豆を想定)で中性浮力となる場合、それぞれの塩分濃度・水温でどれだけの浮力変化が生じるかを計算したものです(単位はkg)。
| 30‰ | 33‰ | 35‰ | 40‰ | |
| 15℃ | -0.109 | 0.177 | 0.267 | 0.645 |
| 20℃ | -0.223 | (基準値) | 0.149 | 0.522 |
| 25℃ | -0.359 | -0.137 | 0.010 | 0.380 |
| 30℃ | -0.513 | -0.294 | -0.147 | 0.219 |
伊豆と沖縄を想定した塩分濃度33‰と35‰のケースでは、-0.294〜0.267kgと、たった600gの範囲に収まる浮力変化にすぎません。
世界的にみた場合でも、海水の塩分濃度はおおむね30〜40‰の範囲に収まり、しかも、一般的に、塩分濃度の高い地域は海水温が高い低緯度地域に集中していることを考えると、海水の塩分濃度と水温の影響による浮力変化は、最大でも1kgに達しないと想定されます。
結論:伝説は大ウソ!
一応補足。
河川や湧水の影響を大きく受けるポイント、たとえば大瀬崎あたりだと、狩野川や狩野川放水路の影響を大きく受けるので、とくに大雨の後などでは局地的に塩分濃度が下がっているという可能性はありますし、海水の入れ替わりが少ないリーフ内では、一般に塩分濃度は高めであると言われています。
それが実際どれぐらいの塩分濃度になっているかが問題ですが、少なくとも、沖縄と本土について一般論としての比較をする限りは、結論は変わらないものと推察します。
もし実務上の経験として、同一条件のダイビングにおいて本当に沖縄のほうがウェイトが多めに必要であるという事実があるのなら、それはどこか別のところに理由があるはずです。
投稿日時 : Apr 22, 2008 11:48 | 個別エントリーへのリンク | コメント (7) | トラックバック (0)
September 04, 2005
安全グッズと緊急グッズ
カテゴリー:Diving Equipment『100の質問』にもありましたが、各種アンケート等で、具体的な器材を特定せずに、「安全グッズを携帯していますか?」とか、「緊急グッズを持っていますか?」とか聞かれることがしばしばあります。
じゃあ、『安全グッズ』とか『緊急グッズ』って、一体何なんでしょう?
ここでは、一応、「安全なダイビングのために普段から使用するもの」を『安全グッズ』、「漂流等緊急事態の際に使用するもの」を『緊急グッズ』と呼ぶことにします。ただ、これらの中には、当然、役割が重複するものもありますし、一般には明確に区別されていないことも多いようです。以下の解説では、一応、『安全グッズ』と思われるものには【安全】、『緊急グッズ』と思われるものには【緊急】とマークしました。また、一般的には安全グッズや緊急グッズと看做されていない器材についても、独断でこれらに含めたものもあります。
・水中ライト【安全】【緊急】
ナイトダイビングでもしない限り水中ライトは不要、と思っているダイバーも多いようですが、透明度があまりよくない海でのハンドシグナルの代わりや、水中でのはぐれ防止、あるいは、漂流等の緊急時の船や航空機に対する合図用など、安全・緊急グッズとして水中ライトは必携だと思います。

中でもお勧めは、写真のような、LEDを使用した少し大型のもの。さすがにHID(高輝度放電灯)を使用したものほどは明るくありませんが、通常の電球を用いたものよりははるかに明るく、その割には消費電力も少なく電池が長持ちするのが特徴です。

「スナッピーコイル」(上写真)のようなものでBCにぶら下げておけば、エントリー/エグジットの際に手がふさがることもなく、水中ではスナップをはずせば、使用に際してストレスもなく、かつ、万一手を離しても失くしてしまうこともないので便利です。
・音響装置(その1)【安全】
水中でバディやガイドに自分のほうを見てもらいたいときは、何かしら音で合図するしか方法がありません。そのため、簡単に音が出せるアクセサリーがあると便利です。

上写真の「ダイビングベル」は、手で振ることで、水中でも聞こえやすい高音域の音が出せます。他にもいろいろなタイプがありますが、タンクのエアーを利用するものはについては後述します。
・水中スレート【緊急】
水中でバディやガイドと意思疎通を図りたいとき、通常はハンドシグナルを使用しますが、緊急時に正確に情報を伝えるためには、やはり、書いて見せる方法が一番です。

単なる白いプラスチック板に鉛筆でも用は足りるのですが、「ミニクエスト」(上写真)のような、BCのポケットにも入れられるくらいの大きさで、何度も書いたり消したりできるものがあると便利です。
・水中用ハサミ【緊急】
一般ダイバーが水中でナイフを使用せざるを得ないケース、つまり、身体や器材に絡まった釣糸や魚網、海藻などを切るという目的においては、ナイフよりハサミの方が使いやすいことが多いはずです。

上写真のものは、その気になれば、レギュレーターの中圧ホースでも切断できるぐらいの優れものです。
・シグナルフロート【緊急】
意外なことかもしれませんが、水面に浮いているダイバーを見つけることは、とくに少しでも波がある場合、かなり困難です。しかし、たった1mでも水面から目立つ色のものが出ているだけで、視認性はずいぶん向上します。

シグナルフロートは、水面でレギュレーターを使って膨らませる、ソーセージ型のフロートで、レーダーに対する反射性能を向上させたものや、緊急時専用として、真空パックされた使い捨てタイプなんかもあります。
ドリフトダイビング(アンカーロープを使わない外洋でのダイビング)では、安全停止中からフロートを上げて、浮上場所の目印にもしますが、それは基本的にガイドの仕事なので、一般ダイバーにとっては、緊急グッズという位置づけでいいと思います。
・音響装置(その2)【緊急】
水面でダイバーの視認性が悪いのと同様、波や風の音、あるいは船のエンジン音などのため、ダイバーの肉声を船に気づいてもらうことは、ほぼ絶望的です。

上写真のものは、レギュレーターからの中圧エアーを利用する音響装置で、主に水面で船などに対する合図用として使用します。水中でも他のダイバーに対する合図として使用できますが、かなり大きい音がしますので、多用は迷惑です。
・ストロボライト【緊急】【安全】
夜間の漂流で船や飛行機に発見してもらうためには、光による信号を送るしか方法がありません。

上写真のようなストロボライトをBCの肩などに取り付けることで、継続的に閃光信号を発することができます。
また、透明度の悪い水中で、バディやガイドとはぐれることを防止するためにも有効です。
・海面着色剤【緊急】

主に昼間の漂流の際、飛行機からの視認性を上げるために、周囲の海面を着色します。
たとえ上記のものを全部揃えても、水中カメラなどと比べればはるかに安く、5万円もあれば十分お釣りが来るんじゃないかと思いますし、それほど嵩張るものでも、取り扱いが難しいものでもありませんから、一般ダイバーでも持っておいて損はないと思います。
あと、写真のリンクは、いわゆる「アフェリエイト」になっていますが、合法的に商品写真をリンクする手段として使ったもので、これで儲けようなどという意図はありません。
投稿日時 : Sep 04, 2005 01:27 | 個別エントリーへのリンク | コメント (3) | トラックバック (0)
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